最高裁、地方議会案件の判例変更

最高裁大法廷で判例変更
 全国の地方議員が理解しておく必要がある判例変更です。1960年(昭和35年)以降、 議員の除名処分以外は裁判の対象となりませんでした。しかしながら、出席停止処分も裁判の対象と変更されました。
 宮城県岩沼市の大友健氏(元市議)が市議会から受けた出席停止処分の取り消しなどを求めた裁判。これについて、最高裁大法廷は2020年11月25日、仙台地裁に差し戻しとの結論としました。

 この判例変更に伴い、総務省は2020年12月17日、全国の地方自治体向けに「地方議会の議員に対する出席停止の懲罰に関する審決の申請について」を通知しました。  P.1 P.2

揺れ動いた判決
仙台地裁:従来の最高裁判例に基づき、元市議の訴えを却下。
仙台高裁:「議員報酬減につながる場合は、裁判の対象となる」として一審判決を取り消し、地裁に差し戻す判決。
最高裁: 出席停止処分は「裁判所が常に適否を判断できる」と判例を変更し、市側(市議会側)の上告を棄却。
     二審・仙台高裁の判決が確定した。

 裁判所はこれまで、「議会のもめごとは内部で処理して下さいね~」でした。これは、最高裁判所が1960年に出席停止処分について、「司法審査は及ばない」(裁判の対象にはならない)とした判決に基づいていました。
 しかし、これまでも裁判所内で揺れが生じていました。以下は、私のページからの引用です。議長による発言取消命令の裁判事例です。
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 愛知県議会議員の発言が議長によって削除されたことが裁判になったことがあります。発言が配布用の会議録やインターネット上の会議録、動画から削除されたました。
 名古屋高等裁判所は平成29年(2017年)2月2日、「一般社会と直接関係する重要な権利」、「司法審査の対象となる」としました。私はこの判決を支持します。九州大学 赤坂幸一准教授も私と同様の考えであると云えます。赤坂准教授に同調する法学研究者も多いようです。
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 私は2021年1月31日、大友氏と電話で1時間程話をして頂く機会を得ました。大友氏は、最高裁大法廷が開いた弁論の場において、岩沼市議会以外の実例も含め、懲罰権の濫用とも思われる幾つかの「地方議会の劣化の事例」を述べたそうです。

 今後は、裁判所が受け付ける地方議会案件の範囲が拡大されることになります。 

参考:厚木市議会における議員の発言・訂正・取消し(2020年)
   厚木市、本会議の発言取り消しに迷走/市役所住所変更議案(2020年)
   厚木市議会、会派に属さない議員を代表者会議から除外 (2020年8月より)