絶滅危惧種の間引き
環境が良い広町公園(中荻野)

 以下は、荻野自然観察会(厚木市)会報誌(2020年8月28日)への寄稿文です。

 こんなに抜いたの!?

 
これは7月29日、私が広町公園の池を見た瞬間の印象です。厚木市公園緑地課は同月22日と29日、広町公園の池に生えたミクリ(水生植物)の間引きを実施しました。ミクリは、神奈川県により絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。ミクリは、「川崎市宮前区、横浜市戸塚区、海老名市、座間市、箱根の一部において絶滅が確認」とされています。
 広町公園の池は、それまでミクリに覆われていました。池は、すっかり綺麗になり、水面が見えるようになりました。
「絶滅危惧種を抜いていいのか」と誰でも疑問に思うことでしょう。その答えは、「ミクリの場合は、抜いても良い」です。
生物多様性基本法第3条1項に「自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて保全」とあります。今回の作業は、これに相当します。また、ミクリを除草してもよい法律上の根拠は、「種の保存法」の「国内希少野生動植物種一覧」に載っていないためです。
 7月29日、広町公園の池にはミクリが10株程しか残されていませんでした。公園緑地課としては、これまでの経験を基にした判断なのだと思われます。公園緑地課は、昨年も間引き作業をしました。広町公園の池は、水質もよく環境が良いといえます。

2017年、荻野中学校生徒らが間引き(マスコミ6社が報道)
 広町公園におけるミクリの間引きは、2017年6月に荻野中学校自然研究部が初めて実施しました。これは、市民から私への問い合せがきっかけとなりました。
 その市民は、「2~3年前から急に植物が増えた」や「カワセミが飛び込めなくなった」等と述べていました。このままでは水中に光が届かないことに加えて、池が次第に陸地化することも想定されました。つまり、この作業は、「絶滅危惧種を間引くことによる生物多様性保全」でした。
 この日を向かえるに際し、私は2016年9月議会一般質問で、ミクリの間引きを取り上げました。加えて、県とも協議しました。
「絶滅危惧種を間引く」という全国的にも稀な作業となりました。結果として、マスコミ6社が報道してくれました。中学生達の姿は、マスコミの取材対象としても良かったと思われます。身近な環境がフィールドワークの場となり得る事例でした。 中学生らにとっては、この作業を通じて、法律を考える一つのきっかけにもなってもらえれば幸いです。

環境政策を整えたい
 ところで、地方自治体は、環境にどう向き合えばいいのでしょうか? 難しく考える必要はありません。住民や市、学校は、既に環境に関する取り組みを行っています。市内には、CSR報告書を作っている企業もあります。まずは、「自分たちは環境活動を行っている」との気付きから始めればいいだけです。その情報共有の場として、各地方自治体は、環境教育推進協議会を設置することが望ましいです。
 私は56歳の今、市議であり大学院生(博士課程)でもあります。50の手習いで法律の研究です。地方自治体における環境政策を進めるために、環境教育の制度設計を研究しています。
 私が大学院を目指した理由は、地方自治体に環境政策の制度設計が足りないことに気が付いたためです。私を突き動かした心の根源は、幼い頃に海や山で遊んだ記憶です。振り返れば、地域の皆さんに環境に関するヒントやご指導を沢山受けて来ています。ご近所さんから受けたミクリについての相談は、とても良いヒントとなりました。
 私は現場体験を基に、市区町村と都道府県との連携や国の役割も視野に入れながら、現状を好転させる解決策を提示し、世の中に貢献することを目指しています。

 荻野の自然 No.129 

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 寄稿は、以上です。以下は、2020年8月29日の写真です。厚木市公園緑地課がミクリの間引きを終えた一ヶ月後です。


 植物にとっては良い落葉などによる栄養を含んだヘドロも見受けられます。間引きの際、根を残すことも重要だといえます。