コロナウイルス対策として設置したパーテーションを撤去
専門家から助言/厚木市議会・本会議場/2020年9月議会

 厚木市議会は2020年9月議会において、本会議場及び委員会室にパーテーションを設置しました。新型コロナウイルス(以下、コロナという。)対策です。しかしながら、本会議場のパーテーションは、9月議会最終日(10月6日)を以て取り外されました。

8月下旬:パーテーション設置
9月1日 :私が異議を述べた(9月議会初日)
9月11日:感染症対策の専門家(私の知人)が厚木市議会にて所見を述べた
10月6日:この日(9月議会最終日)以降、パーテーションは撤去

 これは、感染症対策の専門家である公益社団法人神奈川県看護協会 吉村靖史先生が厚木市議会を訪問し、「全員マスクの正しい着用と外気循環を維持した条件では、パーテーションは不要である」との見解を示し、理解が得られたたためです。 その専門家の話し方は、次の通りでした。

・聞かれた事だけに的確に答えていた
・わかり易い言葉だった
・腰が低かった

実施日:9月11日(金)
出席者:厚木市議会・正副議長、各会派代表者、議会事務局職員 及び 高田ヒロシ

 パーテーションについて、吉村先生の見解は次の通り。

本会議場:無い方が良い。    
委員会室:無くても良い。他の場所で使う方法もある。

専門家が述べた見解
 本会議場のパーテーションは無い方が良い。気流と外気循環が大事である。掃除をどうするか、いつになったら撤去するのか等の基準で悩むことにもなる。 市役所(本庁舎)1階と本会議場のパーテーションは、それぞれ意味が違う。1階にはマスク無しの不特定多数の市民も来る。

 小さな病院には、感染症対策の専門家がいない。そのため、どうしたら良いのか分からない状態である。今は、ゴチャゴチャな対策となっている。コロナを「うつさない・うつらない」が大切である。議会にとって、専門的な情報がない中で対策は大変であったろうと思われる。
 コロナは、接触と飛沫で感染する。手についても大丈夫である。粘膜に付けなければ、侵入して来ない。咳をすると、ミストシャワーになる。マスクは、飛沫を飛ばさないために使用する。飛沫の飛散距離は、咳1回で2メートル。くしゃみの場合は、5メートル飛ぶ。
 厚木市議会では怒鳴り合うことはないので、飛沫は飛ばない。マスクを外して食べたり喋ったりすると、感染の可能性が出て来る。
 濃厚接触者の定義は、患者が発症する2日前から、1メートル程度の距離で、マスクをせずに15分以上会話したである。換言すると、マスクをしていれば、濃厚接触者とはならない。
 感染予防の立場からは、パーテーションは取り外して良い。パーテーションにより、風の流体を決めてしまっている。管理が大変となる。気流が滞る。スクリーンにウイルスが付いた場合、どう対処するのかも問題となる。外した方が良い。

厚木市のデータと専門家による見解の違い
 厚木市は9月2日、本会議場の換気計測を実施しました。その結果、厚木市の委託業者が出した最大収容人数は、163人。これに対して、専門家はWHOの基準を基に、「70人弱が妥当」であるとしました。議員と市長や部長等を合計すると、60人程です。従って、傍聴者を抑えれば、通常通りの議会運営が行えることになります。

 厚木市の計算は、間違っていません。一般的にいわれる会議室等における空気循環の基準を満たしています。しかしながら、コロナの飛沫感染対策としてWHOが定める飛沫予防に必要な病室の気流の計算をすると、70名程になるそうです。163人の場合、飛沫が生じた際に感染を生じてしまう可能性があるといえます。 吉村先生の助言がなければ、WHOの計算方法を誰かが知っていたとは到底考えられまぜん。

委員会室にも「無くても良い」
 「無くても良いか、無い方が良いか」との質問が出ました。それについて、吉村先生は、「無くても良い」としました。委員会室に設置されたパーテーションは、寄附された物です。また、「必ずしも、ここで使わなくても良い。他の場所で使う方法もある」、「気流が外に向いている。風が窓から出ている。冬になると、窓を開けたままには出来ない」 とも述べていました。なお、委員会室のパーテーションは、設置されたままです。

専門家が厚木市議会を訪問した経緯
 
パーテーション設置は、会派代表者会議と議会運営委員会において協議・決定されました。私がパーテーション設置を知ったのは、8月下旬。厚木市議会は、8月7日を以て、会派に属さない議員の代表者(後藤由紀子議員)を会派代表者会に出席させないと決定したためです。従って、意見を伝える機会もありませんでした。
 そのため、吉村先生から得ていた助言を基に、私は9月議会初日(9月1日)、「パーテーションは、感染症対策には逆効果である」と述べました。その結果、「その専門家に来て頂きたい」との依頼を受け、おいで頂くに至りました。

今後、議会による望ましい対応
 コロナ研究者等の見解は変化しています。対策も順次更新することにより、結果的として効果的な対策に繋がると思われます。議会や行政は、近隣自治体の事例を参考にする横並び思考があります。本会議場にパーテーション設置した議会(県内)があったそうです。
 他の課題についても、単に他を真似るのではなく、法的根拠やデータ等の客観的根拠(エビデンス)に基づいた思考が望まれます。その結果、市民にも手本を示すことが出来ます。