厚木市環境基本条例が改正へ

 1月11日、パブリックコメント終了、2月中旬、議会に条例案を提案...。

 これは、厚木市による環境基本条例改正の日程です。時間が短すぎます。条例案(原案)完成から議会へ提案まで半年は余裕を持ち、その間にパブリックコメント等の市民参加を実施することが望ましいです。条例は、その自治体独自の法律です。
 現行条例の場合、1984年12月、市民13名から「厚木市環境保全と浄化に関する条例(仮称)」制定を求める陳情が議会に提出されたことが契機となりました。1985年2月には、「庁内検討プロジェクトチーム」が設置され、1986年6月に議会で可決されました。当時、パブリックコメント制度はありませんでした。それがあったとしたら、2年近くを要して議会に提案されたことでしょう。
 厚木市は2017年3月、議会で私の質問に対して「条例改正する」と表明しました。7月には経営会議において、「12月パブリックコメント実施、2018年2月には議会へ条例案提案」と決めました。
 
 今回、厚木市環境農政部による環境基本条例改正案策定作業において、パブリックコメントの不備が議会で私に指摘され再提出する等、法律への理解不足が散見されました。
 厚木市の職員数は約2000人です。東京都や政令指定都市等の職員数が多い自治体は別として、 法制度を的確に運用するための人員、予算、情報、知識が、行政には不足しています。パブリックコメントは条文案ではなく、骨子案であったことから、「わかりにくい」という声を複数の市民から聞きました。また、「雲をつかむようだ」として、提出を諦めた市民もいます。
 条例案を手掛ける担当部署職員は行政のプロです。だからこそ、まずは自らの知見を冷静に見つめ、市民や研究者、行政各部署等からの様々な意見や知見に耳を傾け、適切に時間を掛けつつ作業を進めることが求められます。

2017年3月~7月
課題設定 具体的な課題の掌握と事実経緯の点検、問題構造の解明等が必要。
2017年7月~12月
基本設計 条例に盛り込むべき内容を検討。
2018年1月~2月
詳細設計 具体的な条文化作業。実効性や効果の検証、慎重な作業が必要。

条例の質向上を目的に自治体と大学による協定締結

 それでは、自治体は条例案を作る際、どうした良いのでしょうか。その解決策の1つは、大学との協定です。厚木市は既に市内5大学と協定を結んでいます。しかし、大学教員の専門領域を活用することが出来ていますでしょうか?  自治体は、職員に法律と財政についての理解を身に付ける機会提供を積極的に展開することが望まれます。
 具体的には、職員が大学院で客員研究員として政策課題を研究する手法です。例えば、「週一回15時で仕事を終え、出張形式で大学院にて研究する方法は、職員研修で育てるより早い」です。 一方的に話を聞く研修よりも課題を研究・発表する方式の方がより我が事となり得ます。大学教員にとっても研究が現実に活かされることになります。従って、この方法は、自治体と大学にとっては、関係強化(win-win)につながります。
 自治体職員は庁舎に閉じこもることなく、近隣大学の門を積極的に叩き研究者の知見を政策課題に活かすことを勧めます。自治体は当たり障りのない条例案作りから、他の自治体と競う使命感を持って欲しいです。

 厚木市は今年2月下旬、環境基本条例改正案を議会へ提案する予定です。現時点では、「環境審議会に役割を新設」だけは条文化される見込みです。条文案を作成中の環境農政部は、現行条例にある前文を「置かない」との主張です。厚木市は、現行条例を廃止し新規制定をする「廃止制定方式」の形式をとります。現行条例の規定が相当程度残されるとしたら、一部改正と解するのが妥当です。目的にも匹敵する前文を削除するのは好ましい措置とはいえません。ミニアセスには消極的でした。環境教育促進協議会の新設について2017年12月の段階では、部署間で検討が十分なされていない状況でした。
 副市長は2017年9月、議会で「魂を入れた条例にして行く」と答弁しました。また、議会答弁や経営会議等が全てではありません。市長はそれらやパブリックコメント等を踏まえ、必要に応じて他にも意見を聞き、決裁(最終意思決定)を行います。果たして、改正案は、どうなるでしょうか。