厚木市議 高田ひろし通信 on the web 

友人のケニア便り・その10です

ケニア便り(その10:99年5月9日号)
 エネルギーの供給は、先進国でも大きな問題だが、スケールこそ違え、途上国でも、しかもその農村部でも大きな問題だ。料理に熱は欠かせないし、水を媒介とする伝染病の予防には水を沸かすのが一番だ。しかし、私の住む地域ではその熱源として主としてマキが使われている。薪炭材としての樹木の伐採は、森林の劣化・減少、砂漠化の脅威となっているので、その使用量の削減は望ましい。また、電気は照明など多くの用途に用いることができる大変便利なエネルギーだ。私は教師をしているので生徒の勉強ということを考えると、良質の照明として是非電気を供給したいと思う。そこで、少しでも環境への悪影響の少ないエネルギーの供給を手伝いたいと考えているのだが、その実現はなかなか難しい。
1.改良かまど
 かまどは最も身近で重要なエネルギー消費源なので、その改良型は、色々な国で様々なタイプのものが普及している。ここケニアでもエンザロかまどという改良かまどをJICA(国際協力事業団:日本の政府開発援助の一部を担う特殊法人、青年海外協力隊もJICAの事業)やNGO(非政府組織)が普及させているので、本命と思っていた。エンザロかまどは、レンガを積んでかまどを作り断熱性が向上するので、マキの消費量が削減できるというものだ。日干しレンガでもよいようなので、これならここでも入手可能だ。
 デジタルの写真がないので * を使って絵を下に書いてみるが、うまくイメージで
きますか?
   鍋       鍋      鍋
**** ********* ******** ****
* *煙 *    * * * * *
* *道 ********* ******** * *
* ********** マキの ******** *
* * 焚き口 * *
******************************
 実際に自分でやる前に、すでに導入している家庭を見たいと思っていた。私の学校から約70kmと比較的近くでJICAの森林プロジェクト(正確には、社会林業)の人たちが、マキの消費量削減による森林保護のために、このエンザロかまどの普及に取り組んでいるので、この4月に見せていただいた。
 ところが4軒の家庭を訪問して、形状はどこも微妙に違うが、1軒しか使われていなかった。2軒は、このエンザロかまどと伝統的な3つの大きな石を置いただけのかまどと両方を使い分けていて、私が訪問したときはたまたま伝統的なかまどを使っていたということだ。一軒は、最近は使用した形跡がなかった。これらの家庭、英語を話せる人がいなくて、なぜ使わないのかうまく聞き出せなかった。
 彼らが言うには、伝統的なかまどのほうが早いからそっちを好むということだった。しかし、作っていた料理が1時間くらい煮続けるギゼリと言う料理で、そんなに早さの違いを気にするのか、納得出来ていない。
 また、ケニアの農家の台所の天井近くはトウモロコシなどを保管する場所になっている。というのは、煙がトウモロコシについた虫を殺す役割があるからだ。このたった一軒エンザロかまどを使っていた家庭は、煙の代わりに農薬を使うと言っていて、これではどちらが環境にいいのか分からない。とはいうものの、この煙のために台所の中は、私には目を開けているのもつらいような場合もあり、台所をどう使うかは問題が難しい。
 いずれにしても、このまま放っておきたくはないので、エンザロかまどをやっている他の人にも話を聞いてみようと思っている。
2.太陽電池
 私の学校では、すでにディーゼルの発電器があって、寮生の夜間の勉強の照明に用いている。その補助に小さな太陽電池のパネルと自動車用の鉛蓄電池もある。だから、今さら、ディーゼルの発電器を代替するような大きな太陽電池と蓄電池も必要ないかな、少なくとも優先度は低いかなと思っている。
 個人のレベルでは、私がこの1月からJICAのお金で太陽電池(75W)と鉛蓄電池を設置した。用途は、電話がないので連絡用の無線と照明だ。これは非常に快適で、夜間の勉強なども楽になった。また、室内が明るくなって汚れも見えて気になるので、きれいにするようになり、衛生環境も改善したと思う。
 また、教員の集合住宅には、もう一人、小さな太陽電池と鉛蓄電池を持っている人がいる。それ以外にも4人、鉛蓄電池だけ持っていて、他の人(1月以降は、私の太陽電池にかなり余力があるので、それで充電することが多い)に充電を頼んでいる人たちがいる。ところが彼らの電気の用途は、テレビを見たり、ラジカセを聞くという娯楽用のみだ。ということで、先生の家に付けると娯楽用になってしまうのが落ちでなにも娯楽用のものの導入を助けることはないし、特定の生徒の家庭に設置すると周りから妬まれるし、その生徒が卒業すれば、太陽電池が遊びになってしまうかもしれないので、個人向けはちょっと難しいかと思う。
3.近隣の学校の食堂
 スイス政府の援助で、断熱材で周囲を覆って断熱性を向上させたかまどと釜を導入。マキの使用量が大幅に削減出来たとのこと(定量的には把握していなかった)。
 このかまど、確かに効果はありそうだが、断熱材の外側はステンレスで覆っているなど、かなり高価なものだと思う。断熱材は、白いもので何かは不明。いずれにしても、地元でできるものではなく、波及効果もあまり期待できないし、ライフサイクルで考えると、このかまどが本当に環境に良いかも分からないので、自分の学校に入れる優先度は低いと判断している。
4.バイオガス

 これは、1のJICAの森林プロジェクトが入っているキツイという町のエネルギーセンターにあったものだ。牛の糞を貯めて、それが発酵するときのガスを集めて利用するというもの。実際にそのガスを燃やすのも見せてもらった。

 これも私の村でやるとしたら、いくつか問題があると思う。

(1) 牛の糞を一カ所に集める必要があるが、私の村では牛は放し飼いに近い状態で、糞も道や収穫後の畑に出し放題だ。だから、糞は肥料になっているし、また牛の飼育方法も変えなくてはいけない。そこまでは、片手間でやるのは無理かなと言う気がしている。
(2) これは、規模のメリットがあると思うので、導入するとしたら、大規模な農家か学校がいいかと思う。ところが、私が知っている農家は、牛が数頭しかいない。また学校では牛を飼っていない。
5.その他
 その他の環境に良さそうな途上国向きのエネルギー源として思いつくのは、マイクロ水力と風力だ。水力は近くの川が乾季に干上がってしまったので、ちょっと無理かと思う。風力はちょっと風が弱い気がするが、風力発電に必要な風の条件を私は全く知らないので、なんとも言えない。
 以上のように、壁に突き当たっていて新たなエネルギー源の供給は、残念ながら出来ていない。