パワーハラスメント対策

逃げ場のない職場のいじめへの対処


 ある公務員から上司による執拗ないじめと叱責に遭い、うつ病となって休職を余儀なくされた体験談を聞きました。パワーハラスメント(職権による人権侵害)です。複数の第三者に聞いたところ、その上司は相手を変えて同じことを繰り返しており、被害者は他にもいるそうです。
 上司から過剰な指示や叱責を受け続けると当事者は解決策が見つからず、事態は悪化するばかりです。歯止めを掛けないと、どんどん踏み込まれる領域は拡大されます。心理的に追い込まれると、小さなミスを重ねるようになり、ミスが叱責を招きます。誰かに相談して苦しさの理解が得られても的確な対応策が示されなければ、結果として自分の非を探すことにもなってしまいます。
 2005年10月、パワーハラスメントに判例が作られました。自殺にまで追い込まれたこの方の場合、病院で受診していなかったため、精神障害の発症・時期に関する医学的判断はなかったものの、奥様の調査により労災が認められるまでに至りました。
 洋の東西を問わず、実年齢と精神的な発達は全く別物です。社会的には成功者であっても、心の中に傷ついた幼少の自分(インナーチャイルド)を抱えたまま年を重ねる人は少なからずいます。パワーハラスメントをする上司の心は、実は大変未熟なのかも知れません。その上司は親が何らかの依存症(*1)であったり、人に言えない体験を抱え自分自身で未解決なまま心に怒りをこめて生きているのかも知れません。
 怒りを外に向けるタイプの上司の下で働くことになり、心の周波数が合ってしまったらどうするか。相手が複数の場合もあるでしょう。今現在、お困りの場合、以下の方法がありえます。

事態の展開をメモする
叱責を何度か録音する
心療内科や精神科に通院し、診断書を得る用意をする
タイミングを見計らって録音している旨と労災申請を直言する

 一般にパワーハラスメントの認知はまだこれからであることもあり、職場において周囲は傍観者になりがちです。傍観者は無言の加担者であると同時に、精神的な被害者でもあります。
 裁判になった場合、上司の行為に業務上の正当性の有無が争点となります。上司から「継続的に人格を傷つける言動を受け、働く環境が悪化、雇用不安が与えられている」と感じたら、それはパワーハラスメントかも知れません。一人で悩まず、労働基準監督署や労働組合(一人でも加入できる労組もある)、心療内科、精神科、法律家、或いはパワーハラスメントに理解がある人に相談しましょう。

パワーハラスメント:英語では通用しません。和製の造語です。
(*1)依存症:アルコールや買い物、薬物、宗教など、対象は広範囲。過度な場合、精神的には未成熟な証。

Upload:1 September,2006