厚木市と自治会:古典的行政手法には限界も
 「行政協力費」。これが厚木市の自治会長への意識を端的に表しています。この意識により、自治会長個人に負担を強いることもあるようです。また、自治会長に政策伝達を頼るため、情報が伝わりきらないこともあります。
 行政協力費とは、厚木市から自治会への支出の一部です。厚木市は、215ある自治会に年間合計約7千万円支出しています。
 厚木市は、98年度まで自治会長個人に「行政協力報償金」として世帯数×300円 +9万円を支出していました。また、自治会長全員を対象にした研修旅行は、全額厚木市の負担でした。さらに、これとは別枠で、厚木市自治会連絡協議会の理事27人を対象の研修旅行もありました。これも厚木市全額負担でした。
 私は98年、これらを議会で取り上げた結果、制度が改正されました。まず、自治会長個人への行政協力報償金は、振込先を自治会長個人ではなく、自治会会計担当者に変更する提案をしました。その結果、支出方法は改正されました。また、金額には全く触れませんでしたが、世帯数×150円 +6万円に減額され、名称も行政協力費と変更されました。
 厚木市全額負担の自治会長研修旅行は、2万円以上を個人負担と改正され、別枠の自治会連絡協議会の研修旅行は、廃止されました。これらの改正は同年末、同様の県外研修旅行を実施していた埼玉県川口市の前市長に、浦和地裁が公費返還を命じる判決を下した偶然も後押しとなりました。
 厚木市では99年、行政が自治会長に法律改正を説明しなかったための悲喜劇が起こりました。市道計画を巡り、地元自治会長4人と地域住民562人がそれぞれ市議会に陳情を提出する異常事態が発生しました。
 相模大堰の建設に伴い、当時の自治会長らは、相模大堰に沿った橋建設を要望しました。この取り付け道路として、相川小学校を分断する道路計画がありましたが、計画は頓挫。その代替え案の相模川右岸堤防道路計画が浮上しました。肝心の橋建設計画は宙に浮いたまま、取り付け道路計画だけが一人歩きしたための混乱です。
 相模川右岸堤防道路計画は、河川法や道路法改正に伴って、計画実施が困難であることを厚木市が認識し、自治会長らに説明すれば、混乱は起こりませんでした。陳情は数の論理で自治会長らの道路整備促進陳情が議会で採択されたものの、法律の範囲内で判断する河川管理者の神奈川県からは認められない状況が続いています。
 現在の厚木市では、情報提供先として、自治会長を頭越しには出来ません。従って、自治会長は頼りにされ、多忙となりります。また、情報提供した自治会長に地域住民へ周知徹底を求める古典的な行政手法は現実的ではありません。相模川右岸堤防道路計画のような混乱をもたらします。
 大阪府枚方市では、行政は自治会への支出は全く行っていないそうです。枚方市の行政運営の中に自治会長の負担を軽減するヒントがあるのではないでしょうか。まず、広報などの配布は自治会委託から新聞折り込み等に切り替えましょう。県下19市中、自治会に広報配布を依頼しているのは、厚木市の他、大和市と小田原市だけです。

市民かわら版「自治会を考える」への投稿文書です(2002年12月15日号掲載)

Last Updated: 2002/12/15/09:51:20